
公開日:2026年8月12日
1%の衝撃
食料品の消費税引き下げに、飲食店はどう立ち向かうか
「税率が下がるのに、なぜ反対するの?」
「食料品が安くなるなら、いいじゃん」
「飲食店も仕入れが安くなって助かるじゃん」
「税率が下がるのに、なぜ反対するの?」
食料品の消費税を1%に引き下げるという話が出たとき、多くの方はそう思われたはずです。私も、最初の反応としてはまったく自然だと思います。
2026年8月5日、政府は飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間、1%に引き下げる基本方針を閣議決定しました。現場に残された準備期間は、およそ8ヶ月です。
経営で一番危険なのは、「なんとなくヤバそう」という感覚のまま時間だけが過ぎることです。不安は正しい行動を生みません。適切な行動を生むのは、数字(金額や締切)です。
ですからこの本では、架空の居酒屋「よいち屋」を一軒建て、最悪のシナリオまで数字を置いていきます。最後には、明日のシフトから使える具体的な打ち手にたどり着きます。
順番に見ていきます。電卓は要りません。まず、この本で使う言葉を6つだけ揃えさせてください。
この本で使う、6つの言葉
この本ではMQ会計という考え方を使います。MG(マネジメントゲーム)という経営シミュレーションで使われる、利益の構造を分解するための道具です。
難しいものではありません。覚えるのは6つの記号だけです。
| 記号 | 呼び方 | 意味 |
|---|---|---|
| P | 客単価 | お客様1人あたりの売上 |
| V | 1人あたりの原価 | 食材費など、客数に比例して増える費用の単価 |
| M | 1人あたりの粗利 | 客単価(P)− 1人あたり原価(V) |
| Q | 客数 | 何人来店したか |
| F | 固定費 | 人件費・家賃・経費・金利。客数が減っても基本的に減らない費用 |
| G | 経常利益 | 最後に店に残る利益 |
それぞれの単価に客数(Q)を掛けたものが、売上(PQ)、原価(VQ)、粗利総額(MQ)になります。記号が2文字になっているのは、単価ではなく総額を指しているという印です。
粗利総額(MQ)− 固定費(F)= 経常利益(G)
これだけです。この2本の式で、この本の最後まで読み切れます。

架空の店「よいち屋」を建てる
議論の土台になる店を作ります。駅から徒歩5分、路面2階の和食居酒屋「よいち屋」。38席、月25日営業。
実在の店の数字を出すと特定されてしまうので、すべて飲食業として無理のない標準値に置いています。この一軒を、本書の最後まで追いかけます。
| 項目 | 単価 | × 客数2,000人 |
|---|---|---|
| 客単価 P | 5,000円 | 売上:PQ 1,000万円 |
| 原価 V | 1,750円 | 原価:VQ 350万円 |
| 粗利 M | 3,250円 | 粗利総額:MQ 650万円 |

原価(V)1,750円の内訳は、食材費1,500円(客単価の30%)と、カード決済手数料などの250円(同5%)です。売上に比例して増えるものは、基本ここに入れます。
次に、客数が減っても減らない費用、つまり固定費(F)です。MQ会計では、この固定費をF1からF5までの5つに分けます。
| 固定費の内訳 | 記号 | 月額 |
|---|---|---|
| 人件費 役員報酬・給料手当・賞与・法定福利費・福利厚生費など | F1 | 300万円 |
| 経費 地代家賃100・水道光熱70・通信・旅費交通・消耗品など55 | F2 | 225万円 |
| 営業外費用支払利息・借入金利息など(補助金助成金のプラスもここに入ります) | F3 | 15万円 |
| 戦略費 広告宣伝費・研究開発費・社員研修教育費など | F4 | 40万円 |
| 減価償却費 内装・厨房機器などの費用分割 | F5 | 20万円 |
| 合計 | F | 600万円 |
この5分類には、それぞれ意味があります。ただ費用を並べているのではありません。
粗利総額650万円から固定費600万円を引くと、経常利益(G)は50万円。売上1,000万円に対して、経常利益率5%です。
ここで強調しておきたいことがあります。
よいち屋は、失敗している店ではありません。飲食業では、これはごく普通の、むしろ健闘している水準です。しかもこの50万円から、さらに借入元本の返済が出ていきます。
利益の帯は、驚くほど薄い
よいち屋の数字を、1枚の図にしてみます。飲食店の経営は、突き詰めると2つの箱を割っていく作業でしかありません。
売上という大きな箱を、原価と粗利総額に割る。その粗利総額を、固定費と経常利益に割る。それだけです。
そして図にすると、いやでも目に入るものがあります。経常利益の帯の、あまりの薄さです。

売上1,000万円のうち、最後に残るのは50万円。全体のたった5%。この細い帯に、経営者の給料も、次の投資も、万一のときの備えも、すべてが乗っています。
食材が少し上がる。人件費が少し上がる。予約が少し減る。それだけで、この帯は消えます。
経常利益 = 1人あたり粗利 × 客数 − 固定費
飲食店の経営とは、この式の M・Q・F をどう動かすかの戦いです。逆にいえば、この3つ以外は利益に影響しません。
預かって、差し引いて、納める
ここが、今回いちばん誤解されているところです。
客単価(P)も原価(V)も売上(PQ)も固定費(F)も、基本的にすべて税抜で見ます。お客様から預かった消費税は店の売上ではありませんし、仕入れで払った消費税は後で差し引かれるので、店のコストでもありません。
現行制度(外食10%・食材8%)で、よいち屋の消費税を計算してみます。
| 区分 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 預かった消費税 | 売上1,000万 × 10% | 100万円 |
| 払った消費税 | 仕入 300万 × 8% | 24万円 |
| 納める消費税 | 100万 − 24万 | 76万円 |
預かって、差し引いて、納める。仕組みとしてはこれだけです。
そして重要なのは次の点です。この100万円も、24万円も、76万円も、売上(PQ)にも原価(VQ)にも固定費(F)にも入ってきません。
税率が下がっても、損も得もしない
では、食材の税率が8%から1%になったらどうなるか。
控除できる額が24万円から3万円に減るので、納税額は21万円増えます。「ほら、税率が下がったのに増税だ」と言われるのは、ここです。
でもそれは、半分だけ正しい。同時に、店が支払う税込の仕入額も21万円減っているからです。
納税は21万円増える。仕入支払は21万円減る。差し引きゼロ。原価(V)も粗利総額(MQ)も経常利益(G)も、まったく動きません。
ただし、この結論には前提があります。「原価(V)に含まれる食材1,500円が、税抜のまま変わらない」ことです。
つまり、私たちが警戒すべきポイントは「税率」ではありません。この前提が崩れるかどうか、その一点に絞られます。
自店がどれに当たるかで話が逆になります。まず顧問税理士に確認してください。これが、今日からやるべきことの1つ目です。
下がるのは税率。決めるのは仕入先
食品メーカー、卸売業者、物流会社、農家、小売店。この方々も今、原材料費・燃料費・電気代・物流費・包装資材費・人件費・保管費の上昇を抱えています。
これらは、食料品の消費税が下がっても1円も消えません。
制度を進める側自身が、そう述べているのです。便乗値上げを非難したいわけではありません。仕入先も、上がったコストを価格に乗せているだけです。
では、仕入れの本体価格が5%上がったら、よいち屋の数字はどう変わるか。食材の単価が1,500円から1,575円になる。たった75円の話です。
| 項目 | 現行 | 食材+5%後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 客単価 P | 5,000円 | 5,000円 | ±0 |
| 1人あたり原価 V | 1,750円 | 1,825円 | +75円 |
| 1人あたり粗利 M | 3,250円 | 3,175円 | −75円 |
| 客数 Q | 2,000人 | 2,000人 | ±0 |
| 粗利総額 MQ | 650万円 | 635万円 | −15万 |
| 固定費 F | 600万円 | 600万円 | ±0 |
| 経常利益 G | 50万円 | 35万円 | −15万 |
客単価も客数も固定費も、何ひとつ変わっていません。1人あたりの原価が75円動いただけです。粗利率でいえば65.0%から63.5%へ、わずか1.5ポイント。
この1.5ポイントが、年間利益の3割です。
あと何人減ったら、赤字になるか
MQ会計だからこそ見える数字が、もうひとつあります。あと何人減ったら赤字になるかです。
計算は簡単で、固定費(F)を1人あたり粗利(M)で割るだけです。粗利が固定費を埋めきる客数が、損益分岐点になります。
| 前提 | 計算 | 赤字ライン | 現在2,000人との差 |
|---|---|---|---|
| 現行 M 3,250円 | 600万 ÷ 3,250 | 1,847人 | 余裕 7.7%(153人) |
| 食材+5%後 M 3,175円 | 600万 ÷ 3,175 | 1,890人 | 余裕 5.5%(110人) |
よいち屋は、もともと客数が7.7%減っただけで赤字に落ちる店です。決して脆弱な店ではありません。飲食業の標準的な構造が、そもそもそういう形をしているのです。
そこに仕入値上げが乗ると、余白は5.5%まで縮みます。
家で食べるか、店で食べるか
ここまで仕入れの話をしてきました。しかし本当に怖いのは、次の話です。
スーパーやコンビニで買う食料品は1%。でも、飲食店で食べる外食は10%のままです。
現在の差は8%と10%で2%。それが9%に広がります。差が4.5倍になる計算です。
同じ料理でも、持ち帰れば1%、店で食べれば10%。テイクアウトとイートインの線引き問題も、これまで以上に大きくなります。
もちろん外食には、調理があり、接客があり、空間があり、時間があります。それは価格に見合う価値です。
それでも家計が苦しいとき、9%の差を前に「今月は家で食べよう」と考える方は、確実に一定数出ます。それは消費者として、まったく合理的な判断です。
客数が減っても、固定費は減らない
MQ会計の怖さは、ここで一気に見えます。客数(Q)が減っても、固定費(F)は1円も減らないからです。
1人あたり粗利を3,250円のまま固定して、客数だけを動かしてみます。
| 客数 Q | 粗利総額 MQ | 固定費 F | 経常利益 G |
|---|---|---|---|
| 2,000人 | 650.0万円 | 600万円 | 50.0万円 |
| 1,900人(−5%) | 617.5万円 | 600万円 | 17.5万円 |
| 1,800人(−10%) | 585.0万円 | 600万円 | ▲15.0万円 |
固定費600万円は、3行とも同じです。人件費も家賃も金利も、客数が減ったからといって翌月すぐには下がりません。減るのは原価(VQ)だけ。
客数が5%減れば経常利益は3分の1、10%減れば赤字。経常利益という帯が薄い、というのはこういうことです。
3つのシナリオを立てる
ここまでで、動く変数は出揃いました。仕入単価(V)、客数(Q)、そして税制対応にかかる事務コスト(F2)。この3つに数字を入れて、3本のシナリオを立てます。
| シナリオ | 前提 | 粗利 M | 客数 Q | 粗利総額 MQ | 固定費 F | 経常利益 G |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A 楽観 | 仕入据え置き/客数据え置き | 3,250円 | 2,000人 | 650万 | 600万 | +50万 |
| B 標準 | 食材+5%/客数−5% | 3,175円 | 1,900人 | 603万 | 600万 | +3万 |
| C 最悪 | 食材+8%/客数−10%/経費+7万 | 3,130円 | 1,800人 | 563万 | 607万 | ▲44万 |
これが、本書でいちばんやりたかったことです。
「なんとなくヤバそう」は、こうして「年間528万円の穴」という具体的な金額になります。
金額になれば、締切と規模が決まります。2027年4月までに、最悪でも年528万円を埋める準備をしておけばいい。逆にいえば、それをやらずに4月を迎えれば、店は静かに削られていきます。
致命傷は、どこにもない
「飲食店が潰れる」と聞くと、大きな失敗を想像されるかもしれません。しかし現実は違います。
よいち屋の周りで、これから起こりうることを並べてみます。どれも、日常的にある話です。
| 起きること | 効く場所 | 月あたり |
|---|---|---|
| 食材の本体価格 +2% | 原価(V)↑ | −6万円 |
| 時給を50円上げる | 人件費(F1)↑ | −9万円 |
| 電気・ガスの値上がり | 経費(F2)↑ | −6万円 |
| 家賃改定 | 地代家賃(F2)↑ | −5万円 |
| カード比率の上昇で手数料増 | 原価(V)↑ | −4万円 |
| 来店が月40人分減る | 客数(Q)↓ | −13万円 |
| 税制変更対応(2年で2回) | 経費(F2)↑ | −7万円 |
| 合計 | −50万円 |
元の経常利益は50万円でした。ひとつも致命傷はないのに、利益だけが正確にゼロになります。
経常利益率5%の店にとって、コストが売上の5%増えるというのは「利益が少し減る」話ではありません。「利益が全部なくなる」話です。
帳簿は黒字ギリギリでも、元本返済で現金が減り続け、ある日払えなくなる。店は、利益がなくなったときではなく、現金が回らなくなったときに閉まります。
2年で2回、切り替え作業がある
シナリオCに入れた「経費+7万円」の正体にも触れておきます。今回の措置は2年間の期間限定です。ということは、現場では税率変更を2回やることになります。
大企業なら専門部署が対応します。しかしよいち屋のような店では、オーナー自身が営業後の深夜に対応することになります。
料理を作り、接客をし、採用をし、経理をし、そのうえ税制変更にも対応する。制度を複雑にすればするほど、重くなるのは中小企業と個人店の固定費(F)です。
逆算すれば、答えは一意に出る
ここからが本題です。MQ会計の本当の価値は、悲観することではなく、逆算できることにあります。
「経常利益(G)= 粗利(M)× 客数(Q)− 固定費(F)」を逆に解けば、元の利益に戻すには何をどれだけ動かせばいいかが、一意に出ます。
標準シナリオB(経常利益3万円)から、元の50万円に戻すとしましょう。必要な粗利総額の上乗せは47万円です。道は3本しかありません。
| 打ち手 | 必要な変化 | 8ヶ月で動かせるか |
|---|---|---|
| ① 客数(Q)を増やす | 1,900人 → 2,048人(+148人) | 減る前の2,000人を超えて、さらに上を目指すということ。集客は相手があり、成果が出る時間も読めない。やるべきだが、当てにはできない。 |
| ② 客単価(P)を上げる | 5,000円 → 5,246円(+4.9%) | 粗利を直接増やす最も強い手。ただし値上げ自体が客数を押し下げる。5%上げて客数が10%落ちれば元の木阿弥。単独では危険。 |
| ③ 固定費(F)を最適化する | 600万 → 553万(−47万) | 家賃は交渉相手がいる。金利も動かない。経費は削りしろが小さい。自分の意志だけで今日から設計し直せるのは人件費(F1)だけ。 |
3つ並べると、はっきりします。
だからこそ、多くの店がここで判断を誤ります。
「人を減らす」は、最適化ではない
ここが、本書でいちばんお伝えしたいところです。
コストが上がると、多くの店はこう考えます。「人を減らそう」「営業時間を短くしよう」。
これは最適化ではありません。ただの縮小です。
人を減らせばサービスが落ち、客数(Q)が落ち、粗利総額が落ちる。固定費は確かに減りますが、それ以上に粗利が減る。前章で見たとおり、客数の減少は利益に対して何倍にも効きます。
縮小のスパイラルは、こうして始まります。
同じ300万円でも、生む粗利は変わる
具体的に見ていきます。よいち屋の1日の来店ニーズと、シフトの配置を並べてみましょう。
まず、多くの店でよく見かける「感覚で組んだシフト」です。
| 時間帯 | 17時 | 18時 | 19時 | 20時 | 21時 | 22時 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 来店需要 | 5人 | 12人 | 22人 | 20人 | 13人 | 8人 |
| 配置人数 | 4人 | 4人 | 4人 | 4人 | 4人 | 4人 |
| 判定 | 余る | 適正 | 不足 | 不足 | 適正 | 余る |
合計24人時。悪気はまったくありません。「だいたい4人いれば回る」という経験則で組まれています。
しかし17時と22時は手が余り、19時と20時のピークでは人が足りずに取りこぼしている。次は、需要から逆算して配置し直したシフトです。
| 時間帯 | 17時 | 18時 | 19時 | 20時 | 21時 | 22時 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 来店需要 | 5人 | 12人 | 24人 | 21人 | 13人 | 8人 |
| 配置人数 | 2人 | 3人 | 6人 | 6人 | 4人 | 3人 |
| 判定 | 適正 | 適正 | 適正 | 適正 | 適正 | 適正 |
合計人時は24のままです。人件費の総額は1円も増えていません。ピークに厚く、閑散に薄くしただけ。
それだけで取りこぼしが消え、1日3人拾えたとします。月25日営業なら75人。1人あたり粗利3,250円を掛けると、月24万円の粗利増です。
これが「削る」と「設計する」の違いです。前者は人件費を守りながら粗利を捨てている。後者は同じ人件費で粗利を拾っている。
そして、数字を見ずにシフトを組んでいる限り、この2つの差は永遠に見えません。
仕入の値上げは、シフトで取り返せる
ここで、覚えておいてくださいとお願いした数字がもう一度出てきます。
| 項目 | 月あたり | 年あたり |
|---|---|---|
| 食材+5%で失う額 | −15万円 | −180万円 |
| 人件費300万円の5% | +15万円 | +180万円 |
| 差し引き | 0円 | 0円 |
人件費300万円のうち、たった5%。人を減らすのではなく、配置と時間の精度を上げるだけで届く水準です。
正直に書いておきます。最悪シナリオC(年528万円の穴)を、人件費だけで埋めることはできません。だから客数(Q)と客単価(P)の手も同時に打ちます。
ただし、いちばん早く、いちばん確実に、自分の判断だけで動かせるのが人件費だということです。集客施策の成果が出るのを待つ間、店を支えてくれるのはここです。
身につけるべき、3つのスキル
感覚を設計に変えるために、身につける必要があるのはこの3つです。順番にも意味があります。
この3つが回り始めると、人件費の意味が変わります。
「毎月出ていく怖いコスト」から、粗利を生むための投資へ。同じ300万円でも、生む粗利がまったく違ってきます。
制度には意見を言う。ただし、待たない
誤解のないように書いておくと、私は食料品の消費税を下げること自体に反対しているわけではありません。家計負担を軽くするという考えは理解できますし、1%分を中低所得者への給付で戻して「実質ゼロ」にする設計も示されています。
問題は、消費者だけを見て、その裏側にいる生産者・卸売業者・物流会社・小売店・飲食店の数字まで設計されているのか、ということです。
だから、意見は言い続けます。「税率を下げるんだから全部正しい」「反対する奴は増税派だ」という単純な議論では、現場は救われません。
ただ同時に、こうも思っています。制度が理想どおりに変わるのを待っている時間は、現場にはありません。
備えた店は、残る
「飲食店が減っても、自炊すればいい」。そんな単純な話ではありません。よいち屋のような店が1軒閉まると、街ではこういうことが起きます。
人件費(F1)として支払われていた月300万円の給料が、地域から消える。原価(VQ)として買っていた月300万円分の食材の、仕入先が1軒減る。地元の卸業者の売上(PQ)が減る。空き店舗が増え、街の魅力がなくなる。そして、体力のある大手チェーンだけが残る。
飲食店の売上は、料理の代金だけではありません。人が集まり、会話をし、地域に雇用を作り、生産者と消費者をつなぐ場所の対価です。
だから店を残すことは、経営者を守ることではなく、地域経済と食文化を守ることだと思っています。
食料品の税率が下がった瞬間に、飲食店が一斉に潰れるわけではありません。でも、備えなかった店から、静かに削られていきます。
不安を数字に変える。数字を打ち手に変える。打ち手を、8ヶ月で仕組みにする。
やることは、それだけです。
本書でお伝えした「許容人件費の逆算」から「週次での差異反映」までを、実際のシフト表に落とすところまで一緒にやる場を用意しています。よろしければ、現場でお会いしましょう。
本書についての注記
「よいち屋」は架空の店舗です。数値は月商1,000万円・粗利率65%・経常利益率5%という、飲食業として標準的な水準に基づく試算モデルであり、特定の実在店舗のものではありません。
実際の影響は、各店舗の課税方式(本則課税・簡易課税・免税)、業態、仕入構成、酒類比率によって大きく異なります。自店の判断は、必ず顧問税理士にご相談ください。
制度の内容は2026年8月5日の閣議決定時点の情報に基づいています。対象品目の線引きや財源の詳細は、今後の税制改正大綱および国会審議で変わる可能性があります。最新の情報を必ずご確認ください。
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