セミナー資料を本にする手順──話し言葉を原稿に変える

今井 陵太(ホンカキAI)

#本の書き方#講師#セミナー

毎回話しているセミナーの内容は、すでに一冊分の材料です。ただしスライドをそのまま並べても本にはなりません。口頭で補っていた情報を書き足し、話し言葉を書き言葉に直す5つの手順を説明します。

目次10項目)
  1. スライドをそのまま並べても本にならない理由
  2. 手順1|「1スライド=1節」で割らない
  3. 手順2|口頭で補っていた3つを書き足す
  4. 手順3|話し言葉を書き言葉に直す
  5. 手順4|スライドの図は、本の資産としてそのまま使う
  6. 手順5|セミナーには無かった「読者の寄り道」を作る
  7. 資料が無い場合は、先に材料を出す
  8. セミナー本にありがちな3つの落とし穴
  9. Claudeとつなげば、一冊の形まで一気に進む
  10. まとめ

セミナーや研修を何度もやっている人は、実はもう一冊分の材料を持っています。スライドがあり、話す順番が決まっていて、どこで受講者が納得するかも分かっている。これ以上の下地はありません。

それでも本にならないのは、スライドが「話す人がいる前提」で作られているからです。この記事では、その差を埋めて資料を原稿に変える5つの手順を説明します。

スライドをそのまま並べても本にならない理由

セミナーのスライドは、意図的に情報を落としてあります。キーワードだけを大きく置き、残りは口で補う。それが良いスライドです。

つまり、あなたのセミナーの価値のうち大部分は、スライドの外にあります。文字起こしを貼り付けただけの本が読みにくいのも同じ理由で、今度は逆に、間の取り方や身振りが消えた話し言葉だけが残ってしまう。

必要なのは、落としてあった情報を戻し、その場にしかなかった情報を捨てる作業です。

スライドを本にするときは、口で補っていたことを書き足し、その日にしかない話を削る
スライドを本にするときは、口で補っていたことを書き足し、その日にしかない話を削る

手順1|「1スライド=1節」で割らない

まず、スライドの枚数と本の節数を対応させるのをやめてください。

セミナーでは、1つの主張を3枚のスライドで見せることも、1枚のスライドで5分話すこともあります。本にするときの単位は枚数ではなく、「言い切れる主張ひとつ」です。

  1. スライドを順に見て、各枚の「言いたかった一文」を書き出す
  2. 同じことを言っている枚をまとめる
  3. まとまりに見出しをつける ── それが節になる

この時点で、たいてい枚数の半分以下になります。減って正解です。

手順2|口頭で補っていた3つを書き足す

削ったぶん、書き足すものがあります。セミナー中に口で補っていたのは、ほぼこの3つです。

口で言っていたこと本では
「なぜこれが大事かというと」(前提)節の冒頭に一段落として書く
「実際にあった話ですが」(具体例)固有名詞を伏せて1事例だけ書く
「ここ、よく間違われます」(注意)引用や強調で目立たせる

とくに前提は忘れられがちです。受講者は申し込んだ時点で問題意識を持っていますが、本の読者は表紙を見ただけで開いています。「なぜこの話をするのか」を毎章の頭に置いてください。

手順3|話し言葉を書き言葉に直す

文字起こしを使う場合は、次の3つを機械的に直すだけでかなり読めるようになります。

  • 相づち・つなぎを削る(「えー」「ですので」「という形で」)
  • 一文を短くする。話し言葉は接続助詞でつながって長くなる。「〜ので、〜ですが、〜ということで」は3文に割る
  • 指示語を実名に戻す。「これ」「さっきの」は、その場では通じても紙の上では通じない

ここはAIに任せて構いません。整えるのは機械の仕事です。ただし整えたあと、自分の言い回しに戻す一往復は必ず入れてください。ここを飛ばすと、誰が書いても同じ文章になります。

手順4|スライドの図は、本の資産としてそのまま使う

セミナーで使っている比較図やステップ図は、本でもいちばん効きます。読者が理解を確定できる場所だからです。

図を入れる位置は、説明の前ではなく後ろ。先に図を見せると、読者は図の解読に気を取られて文章を読みません。長い説明の締めくくりとして図を置くと、そこで話がまとまります。

手順5|セミナーには無かった「読者の寄り道」を作る

セミナーは前から順に進みますが、本は読者が好きな順で開きます。だから本には、セミナーには不要だったものが必要になります。

  • 目次(読者はここで自分の章を探す)
  • よくある質問の章(質疑応答で毎回出る質問をまとめる)
  • 用語の説明(初出のときに一行で足す)

質疑応答の記録が残っているなら、それは章立ての宝庫です。章の組み方は本の目次の作り方にまとめました。

資料を本にする5つの手順。主張で割る→口頭を書き足す→書き言葉に直す→図は説明の後ろ→読者の寄り道を作る
資料を本にする5つの手順。主張で割る→口頭を書き足す→書き言葉に直す→図は説明の後ろ→読者の寄り道を作る

私は34回のプロモーションで説明会を設計してきました。同じ話でも、その場で伝わる形と、読んで伝わる形は別物です。うまくいかない転用は、たいてい会場での順番のまま紙に落としています。

資料が無い場合は、先に材料を出す

ここまでは「すでに資料がある人」の話でした。まだ資料が無い場合は、順番が一つ手前になります。

頭の中にあるものを先に出す工程です。やり方はノウハウを言語化する5つの質問にまとめました。出てきた材料を並べれば、それがスライドの代わりになります。

なお、整形をAIに任せたあと薄くなったと感じたら、直す場所は決まっています。AIが書いた文章はなぜ読まれないのかに3か所だけ挙げました。

セミナー本にありがちな3つの落とし穴

最後に、資料から起こした本が失敗するパターンです。

  1. 自己紹介が長い ── 会場では必要ですが、本では2ページ目で閉じられます。実績は巻末へ
  2. 宣伝が前に出る ── 本文で売り込まず、最後まで読んだ人にだけ次の案内をする
  3. その日の最新情報に依存する ── 制度や相場の数字は変わります。数字そのものより「どう判断するか」を書けば、本の寿命が延びます

Claudeとつなげば、一冊の形まで一気に進む

ここまでの手順は、一つずつ手作業で進めなくても構いません。

ホンカキAIには、Claude(デスクトップ版・Web版)とつなぐ機能(MCP)があります。つないでおけば、Claudeとの会話の中で「このセミナー資料と文字起こしを、ホンカキAIの本にして」と頼むだけです。ClaudeがホンカキAIを直接操作し、章立てから本文、図解までを本の形にして書斎へ届けます

Claudeに任せられることあなたが決めること
資料と文字起こしを読み、主張ごとに章と節へ分ける(手順1)どの主張を残し、どれを捨てるか
話し言葉を書き言葉に整える(手順3)自分の言い回しに戻す一往復
比較図やステップ図などの図解を本文に置く(手順4)その図で言いたい一点
目次のついた一冊として書斎に作る(手順5)口で補っていた3つの書き足し(手順2)

組み立ては、一度の会話で本の形まで進められます。あとから節を直すときも、Claudeが示すのは差し替えの案だけで、あなたが承認するまで本文は変わりません

ただし、手順2の「口で補っていた3つ」は、Claudeには書けません。受講者の前で話したときの前提、実際にあった相談、何度も訂正してきた誤解。これを持っているのは、あなただけです。速くなるのは組み立てで、中身を決めるのはあなたです。

Claudeとの連携は、スタンダードプランから使えます。


まとめ

  • セミナーの価値の大半はスライドの外(口頭)にある。まずそれを書き戻す
  • 本の単位は枚数ではなく「言い切れる主張ひとつ」
  • 話し言葉の整形はAIでよい。ただし自分の言い回しに戻す一往復は省かない
  • 図は説明の後ろに置く。理解を確定させる役割
  • 目次・FAQ・用語説明は、セミナーには無く本には要るもの
  • 組み立てはClaudeとつないで一度の会話で進められる。口で補っていた3つの書き足しだけは自分で

Claudeを使わない場合も、Markdown原稿の取り込みで、すでにある資料や文字起こしをそのまま持ち込めます。比較図・ステップ・ピラミッド・ファネルなど25種類の図解ブロックを本文に置けるので、ホワイトボードで描いていた図もそのまま一冊に入ります。講師・コンサルタント向けの使い方はコンサルタント・コーチ・講師の方へにまとめています。

一億総著者 ── あなたの知識や経験は、きっと誰かの一歩になる。何度も話してきた内容なら、材料はもう揃っています。

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