ノウハウを言語化する5つの質問──書くことがない人へ

今井 陵太(ホンカキAI)

#言語化#専門家#本の書き方

「自分には書くことがない」と言う専門家ほど、実は材料を持っています。当たり前になって見えなくなった知見を掘り出すための5つの質問と、集めた材料を章に変える手順を説明します。

目次9項目)
  1. 「書くことがない」の正体
  2. 質問1|初回に、毎回説明していることは何か
  3. 質問2|あなたが何度も訂正していることは何か
  4. 質問3|どこで判断が分かれるか
  5. 質問4と5|断っている仕事と、10年前の自分
  6. 集めた材料を章に変える
  7. 書くより先に、話して掘る
  8. 「出す」と「選ぶ」は別の作業
  9. まとめ

「自分には、人に教えられるようなことは無い」。本当によく聞く言葉です。そして、そう言う人ほど材料を持っています。

書くことが無いのではなく、自分にとって当たり前になりすぎて、価値だと認識できていないだけです。

スタッフに教える、資料にする、記事にする、本にする。どれを目指すにしても最初の工程は同じで、頭の中にあるものを外に出すことです。この記事では、そのための5つの質問を紹介します。

「書くことがない」の正体

10年やっている仕事の中身は、10年やっていない人から見れば全部が新情報です。それが見えなくなるのは、あなたの周りに同業者が多いからです。

同業者に囲まれていると、自分の知識は「みんな知っていること」に見えます。しかし本の読者は同業者ではありません。あなたの隣にいる人ではなく、あなたに相談しに来る人が読者です。

掘るべきは「まだ誰も言っていないこと」ではなく、「自分にとっては当たり前で、相手にとっては初耳のこと」。

以下の5つは、そのズレを見つけるための質問です。紙に書き出しながら答えてみてください。

質問1|初回に、毎回説明していることは何か

新しいクライアントに会うたび、必ず同じ説明をしていませんか。全体の流れ、期間の目安、最初にやるべきこと。

毎回説明しているということは、毎回必要とされているということです。何度も同じ話をしているなら、それは一冊の骨格です。時間で思い出すのがコツで、「最初の30分で何を話すか」を順に書き出すと、そのまま第1章から第3章になります。

質問2|あなたが何度も訂正していることは何か

「みなさんこう思っているんですが、実は違うんです」と言う場面を思い出してください。

誤解の訂正は、専門家にしか書けない情報です。一般論はネットにありますが、「多くの人がここで間違える」という指摘は、実際に何十件も見た人しか持っていません。訂正が3つ以上あれば、それだけで章がひとつ立ちます。

質問3|どこで判断が分かれるか

同じ状況でも、Aを勧めるときとBを勧めるときがあるはずです。その分かれ目の基準が、あなたの一番の財産です。

  • どういう条件ならAか
  • どういう条件ならBか
  • 過去に判断を誤ったのはどんなときか

ここが書ける人は多くありません。教科書は「AとBがあります」までしか書けないからです。基準を言葉にできると、その本は他の誰にも書けない本になります

質問4と5|断っている仕事と、10年前の自分

残りの2つは、視点をずらすための質問です。

質問出てくるもの
どんな依頼を断っているかあなたの仕事の定義。「やらないこと」は価値観の表明になる
10年前の自分に何を言うか遠回りの記録。読者が今いる場所そのもの

とくに5つ目は、読者との距離がいちばん近くなる材料です。専門家が語る成功談より、遠回りした話のほうが最後まで読まれます

5つの質問。毎回の説明・何度もする訂正・判断の分かれ目・断っている仕事・10年前の自分
5つの質問。毎回の説明・何度もする訂正・判断の分かれ目・断っている仕事・10年前の自分

私は2017年から、コンテンツホルダーのプロダクトローンチをプロデューサーとして設計してきました。34回すべてで、最初にやってもらうのがこの掘り出しです。「話すことがない」と言っていた人ほど、聞いていくと止まらなくなります。無いのではなく、出し方を知らないだけでした。

集めた材料を章に変える

質問に答えると、たいてい30〜50個のかたまりが出てきます。ここからの手順は3つです。

  1. 似たものを寄せる(分類しようとせず、隣に置けるものを寄せるだけ)
  2. かたまりごとに「言いたいこと」を一文にする
  3. 読者が知りたい順に並べる ── 自分が話しやすい順ではない

3つ目が肝心です。書き手は歴史や背景から話したくなりますが、読者は自分の困りごとから読みます。並べ方の型は本の目次の作り方に4つまとめました。

質問に答える→30〜50個のかたまり→寄せて・一文にして・読者の順に並べる→本編5〜7章
質問に答える→30〜50個のかたまり→寄せて・一文にして・読者の順に並べる→本編5〜7章

書くより先に、話して掘る

もうひとつ、確実な方法があります。書かずに、まず話すことです。

キーボードに向かうと人は急に構えます。「本にふさわしい文章」を書こうとして、当たり障りのない一般論になる。ところが同じ内容を人に説明させると、具体例も比喩も自然に出てきます。

  • 誰かに質問してもらい、答えを録音する
  • スタッフに「なぜそう判断したんですか」と聞いてもらう
  • AIに「素人のふりをして質問して」と頼み、答え続ける

出てきた話し言葉は、あとから整えれば十分読めます。整えるのは機械にもできますが、具体例を持っているのはあなただけです。AIに任せてよい工程と、任せてはいけない工程はAIで本を書く5ステップで整理しています。

「出す」と「選ぶ」は別の作業

最後に、混同しやすいところを。

この記事は出す話です。とにかく量を出す。良し悪しは考えません。

出したあとに選ぶ工程が来ます。どれが売り物になるか、どれが人を動かすか。そちらの基準はコンテンツ販売で売れるテーマの見つけ方にまとめました。

順番を逆にすると手が止まります。選びながら出そうとすると、何も出てこないからです。まず全部出して、あとから選んでください。


まとめ

  • 「書くことがない」は、当たり前になって見えていないだけ
  • 毎回する説明・何度もする訂正・判断の分かれ目、この3つが中核
  • 断っている仕事と10年前の自分への言葉が、独自性と親近感を足す
  • 材料は分類せず「寄せて、一文にして、読者の順に並べる」
  • 書けないときは書かずに話す。整形は後からでいい

ホンカキAIは、5つの問いに答えるとタイトルと目次のついた企画書ができるところから始まります。答えているうちに、自分では価値だと思っていなかったことが出てくる──その設計です。書きためた原稿は Markdown で取り込めるので、話して起こしたものをそのまま持ち込めます。

一億総著者 ── あなたの知識や経験は、きっと誰かの一歩になる。当たり前だと思っていることほど、誰かが探しています。

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