AIで書いた本は自分の著作物になるのか──文化庁の考え方とKDPの区分

・今井 陵太(ホンカキAI)

#AI活用#著作権#電子書籍

AIで書いた本が自分の著作物になるかは、AIを使ったかどうかでは決まりません。文化庁の考え方とKDPの申告区分を手がかりに、線がどこに引かれているのかを整理しました。

目次(9項目)
  1. 手がかりは「使ったかどうか」には無い
  2. 文化庁の考え方は段階で分かれている
  3. 見られているのは関与の程度そのもの
  4. KDPは生成とアシストを申告で分けた
  5. 分かれ目は道具ではなく工程の順番
  6. 関与をつくる4か所|順番を入れ替えない
  7. 共著は最初からアシスト側に立つ作り方
  8. 残すのは作りながら出る4つだけ
  9. まとめ

AIと一冊を書こうとして、最初に止まるのが「これは自分の著作物になるのか」です。調べても、グレーだという整理が多く見られます。

公表されている資料は、判断の手がかりをすでに示しています。置かれているのは「AIを使ったかどうか」ではなく「誰が中身を決めたか」の側です。この記事では、文化庁の考え方とKDPの区分を読み、その手がかりを自分の書き方のどこで作るのかを書きます。

手がかりは「使ったかどうか」には無い

セミナー原稿をためてきた講師も、実務の型を書き出した士業も、出版の手前で手が止まります。この記事では、その不安を3つに分けて見ます。

自分のものになるのか、申告が要るのか、後から問題にならないか。あなたが止まっているのも、このどれかです。

形がはっきりしているのは2つです。日本の著作権の考え方と、販売する場所の規約。どちらも、使った事実ではなく中身を誰が決めたかを見ています。

あなたが気にしていること資料が見ていること
AIを使ったかどうか誰が中身を決めたか
何割をAIが書いたか人の創作的な関与があるか
あとで気づかれるかどうか出すときに申告したかどうか

左の列で考えている限り、答えは出ません。右の列に置き換えると、法律の話が自分の手順の話に変わります。

グレーだと語られる論点の多くは、開発・学習の段階に関わるものです。書き手が動かせるのは、生成したあとの側です。

文化庁の考え方は段階で分かれている

文化庁は令和6年(2024年)3月15日にAIと著作権に関する考え方についてを公表しています。

この資料では、AIの開発・学習の段階と、生成・利用の段階が分けて整理されています。書き手に関係するのは後者です。

人がAIを道具として使い創作的寄与を加えた場合を除き、AIが自律的に生成したものには原則として著作権が発生しない、とされています。

そこで見られているのは、人間の創作的な関与の程度だとされています。使ったかどうかではありません。

ただし、これは考え方を整理した資料であって判例ではありません。個別の案件がどう扱われるかは、弁護士など専門家に確認してください。

見られているのは関与の程度そのもの

「AIを使って書いた本」と「AIが自律的に生成したもの」は、同じではありません。

道具として使い、創作的な寄与を加えたなら前者です。何も決めずに出てきたものをそのまま出せば、後者に近づきます。

つまり問われているのは分量ではありません。どこであなたが決めたか、です。

決める材料は、もともと本人の中にあります。何を書けるのかを取り出す手順はノウハウを言語化する5つの質問に書きました。

KDPは生成とアシストを申告で分けた

Amazonは2023年9月7日(米国時間)にKDPのコンテンツガイドラインを更新しています。AIで作成したテキスト・画像・翻訳を公開する場合は、申告が求められるようになりました(ITmedia 2023年9月10日の記事)。

ガイドラインに従わない場合は、却下または削除の可能性があると報じられています。

同じ更新で「AI生成」と「AIアシスト」が分けられました。

区分当てはまる使い方申告
AI生成AIが作ったテキスト・画像・翻訳を公開する要る
AIアシスト自分の作品の編集・改善・誤りの確認に使う要らない
AIアシストブレインストーミングに使い、最終的に自分でテキストを作る要らない

申告は出版の手続きの中で、テキスト・画像・翻訳のそれぞれについて行うものとされています。ただし規約は変わります。

KDPの線は、最終的に自分でテキストを作ったかどうかで引かれている
KDPの線は、最終的に自分でテキストを作ったかどうかで引かれている

分かれ目は道具ではなく工程の順番

表の3行目を読み返してください。「最終的に自分でテキストを作る」が、アシスト側に立つ条件です。

これは文化庁の考え方の「人が創作的寄与を加えた」と、ほぼ同じ場所を指しています。目的の違う2つの文書が、同じ向きを向いていました。

分けているのは、道具ではなく順番です。

  • 先にAIに書かせ、あとから手を入れる ── 出発点はAIの側にある
  • 先に自分で決め、AIに広げさせ、最後は自分で書く ── 出発点は本人の側にある

この区分を読むかぎり、前者から始めると、あとから直しても出発点は動かない、と受け取れます。これは記事側の読み方なので、申告の要否は、出すときにKDPの最新のガイドラインで確かめてください。

違うのは道具ではなく順番。出発点がどちら側にあるかで変わる
違うのは道具ではなく順番。出発点がどちら側にあるかで変わる

下書きに足りないものを足す話はAIが書いた文章はなぜ読まれないのかで扱っています。

関与をつくる4か所|順番を入れ替えない

  1. 誰に向けて書くかを自分で決める
  2. 何を主張するかを決め、章に分ける
  3. 経験・数字・場面を自分の記憶から出す(担当した年数、断った案件、その場で言われた一言)
  4. 最後の一文を自分で確定する

1と2が抜けると、出てくるのは一般論になります。3は本人にしか出せない材料です。

Kindleで出す場合の向き不向きは経営者がKindle出版するメリットと、向かない場面にまとめました。

共著は最初からアシスト側に立つ作り方

ホンカキAIは、5つの問いに答えるところから始まります。企画書ができるのは、その答えが出そろってからです。

中身を決める工程が先です。AIは問いかけ、引き出し、形にする側を担います。

この順番なら、あとから区分に迷う場面が起きにくくなります。全体の流れはAIで本を書く方法で追えます。

残すのは作りながら出る4つだけ

申告は自己申告です。だから、自分がどちらの区分かをあなた自身が説明できると迷いません。

自分の手元に残しておくものは4つです。

  • 企画書 ── 5つの問いに答えた時点のものを、書き換える前にコピーしておく
  • 目次 ── 章の順番を決めたときの版を残す
  • 材料メモ ── 経験・数字・場面の出どころを、その場で書き添える
  • 修正の履歴 ── 最後の一文を確定した跡を消さずに置く

どれも書き進める中で手元にできていくものです。あとからまとめて作り直す必要はありません。

ここに書いたのは公表資料の読み方です。判断が要る場面では、専門家に確認してください。

まとめ

  • 文化庁の考え方とKDPの区分は、どちらも「誰が中身を決めたか」を見ている
  • 文化庁は令和6年3月15日に「AIと著作権に関する考え方について」を公表している
  • 道具として使い創作的寄与を加えた場合を除き、原則として著作権は発生しないとされる
  • KDPは2023年9月7日の更新で「AI生成」と「AIアシスト」を分け、申告の要否を変えた
  • 決めるのが先で、広げるのが後。この順番が創作的な関与そのものになる

一億総著者 ── あなたの知識や経験は、きっと誰かの一歩になる。見られているのは使った道具ではなく、あなたが何を決めたかです。

材料の出し方はノウハウを言語化する5つの質問にまとめています。

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